名前入りカセット博物館館長に聞く、ファミコンカセットを集めて元の持ち主に返す理由

幼いころファミコンのカセットを失くさないように、名前を書き込んだという人も多いのではないでしょうか。東京・秋葉原の「フライハイカフェ」で開催中の「名前入りカセット展2019」は、その名の通りファミコンカセットを中心に名前が書いてあるカセット」を展示しているのですが、こちらが大きな話題になっているということで取材に伺いました。

「名前入りカセット展」とは?

「名前入りカセット博物館」は、そんな「名前入りカセット」を集めて元の持ち主に返還しようという取り組みをされています。普段は会社の一室に保管されているネット上でしか見られない1000本を超える「展示物」を実際に見ることが出来るイベントが「名前入りカセット展」なのです。

「名前入りカセット展2019」は秋葉原駅昭和通り口改札から徒歩5分、普段はカフェとして営業されている「フライハイカフェ」店内にて開催されております。期間は2019年11月16日(土)~12月8日(日)までの予定でしたが、好評のため12月22日(日)まで延長されました。

それでは「名前入りカセット展」の中身をご紹介しましょう。コチラが外観です。

ガラス一面に張り付けられたファミコンとスーパーファミコンのカセットの数々!これを見ているだけでもテンションが上がります!

そして店内の至る所にカセットが張り付けられています。店内どこを見まわしても名前の書いてあるカセットだらけで、ワクワクドキドキが止まりません!

あの伝説の野球ゲーム「燃えろ!プロ野球」だけを集めたコーナーや今は亡きゲームショップのシールが貼ってあるソフトなど、バリエーションも非常に豊富です。

こちらは人気野球ゲーム「究極ハリキリスタジアム」なのですが、パスワードが書いてある紙が同梱されていました!これだけならドラクエでもよくあることなのですが・・・

裏面(というか表)に「島倉千代子」さんの若き日の姿が!これは色んな意味で貴重な品です!

展示しきれなかったゲームボーイ、ディスクシステム、NINTENDO64などのソフトはラックに収納されていて自由に見ることが出来ます。これらの貴重なソフトを見ることのできる入場無料の「名前入りカセット展2019」は、期間延長して12月22日までの開催となっております。

名前入りカセットとの出会い

この唯一無二のイベント「名前入りカセット展」をどんな目的で開催しているのか、またこのイベントを始めた動機などを主催の「名前入りカセット博物館」館長、関純治さんに伺いました。

関 純治(せき じゅんじ)
1973年生まれ
ハッピーミール株式会社 代表取締役社長
プログラミングアカデミー株式会社 代表取締役社長
名前入りカセット博物館 館長
各種イベント、メディア出演多数
新作ファミコン風ADVゲーム「凍える銀鈴花」2020年初夏発売予定

- まず始めに、関さんがゲーム業界に関わるようになったきっかけを教えてください

関館長(以下、関) ゲームが小さい頃から好きでゲーム制作の専門学校に行ったんですね、そこを卒業してADK(※1)に入社しました。そこから紆余曲折があって10年ほどで独立し、ハッピーミールというゲームソフト開発会社を立ち上げて現在に至ります。

- 「名前入りカセット博物館」を始めるに至った経緯を教えていただけますでしょうか

 25年ほど前にファミコンの中古ソフトが激安で手に入るようになったんです、プレステが出てきてファミコンソフトの相場が下がったので。最初は遊びたいゲームだけを買っていたのですが、だんだんコレクターとしてコンプリートを目指すようになっていって・・・でも、先に全種類集めたという人がいるって聞いてモチベーションが下がってしまいました(笑)

- コレクターとして先を越されるのは悔しいですよね

 それでも旅行中とかにゲームショップに立ち寄ったりするんですよ、そんな矢先に旅行先のアメリカで名前が書かれているNES(※2)版「ゼルダの伝説2(リンクの冒険)」に出会いました。大抵のソフトは中古なら1ドル程度で買うことが出来る時代、状態が悪いソフトに12ドル99セントは高いな・・・と思い一度店を出たんです。

- 箱説なしで名前が書いてあるソフトなので諦めかけたと(笑)

 そうなんですよ、でもアメリカ人もカセットに名前書くんだ!と思ってショップに戻って購入しました。それからですね、日本に戻ってからも名前が書いてあるソフトを買うようになったのは(笑)

- 名前入りカセットを買い始めた頃は持ち主に返却するつもりで購入していたのですか?

 いや、それはなかったです。いつか何かにネタとして使えればとは思ってはいましたが、人と違うこともしたかったしモチベーションも上がるしジャンクコーナーで安く買えるし、ソフトを買いに行く楽しみが増えただけでした。

(こちらが全ての原点「ゼルダの伝説2(邦題:リンクの冒険)」、「Teresa」という名前が入っていますがスーパーマリオ3に登場するテレサを思い出すのは筆者だけでしょうか)

(※1)かつて存在したゲーム開発会社、主にNEO-GEO対応ソフトの開発元として知られている
(※2)Nintendo Entertainment Systemの略、海外版ファミコン

「名前入りカセット博物館」を始めた経緯

- ではどういうきっかけで持ち主に返還しようと思ったのでしょうか

 集めているうちにどんな経緯で名前を書いたのか気になりだしたんです。「お父さん」って書いてあったり、カセットの一部が欠けていたり・・・持ち主に返したら話しが聞けるなって思ったのがきっかけといえばきっかけになります。そこで1000本近く集まれば箔がつくかなと思ったのですが、実際に集まったのでサイトを開設したんです。

- それが始まりだったと

 そこですね。ひとつひとつが物語になっているので、ゲームのストーリーより面白いかも知れません。

- ここまで大規模になったのには理由があったのでしょうか

 関西ローカルのテレビ番組(※3)に出演したんです。急に会社に電話がかかってきて珍しくて懐かしい物を集めている人ということで出演したのですが、その際にこれからの目標を聞かれたんですよ。そこで「持ち主に返すことを目的にしたい」と言ったところ、番組を見た知人から「このネタYouTuberとかにパクられるかもしれないよ」と連絡がきまして・・・

- 先を越されたら元も子もないですよね

 誰よりも早くやらないと何の意味もないですよね。そこでその知人たちがホームページを制作してくれたり、ソフトの登録をボランティアで手伝ってくれたのが「名前入りカセット博物館」の始まりです。

名前入りカセット博物館 https://bonusstage.net/famicassearch/

(※3)朝日放送「雨上がりのやまとナゼ?しこ」

「名前入りカセット展」を開催するに至った理由

- 実際に展示を始めたのには理由があるのでしょうか?

 基本的にネット上での活動だったのですが、ネットニュースで取り上げられたりファミ通さんで取り上げられたりする流れで何年か前からリアル展示会を開いています。どういうわけか今回は軽くバズったので、こうして取材していただいたり、安住さんの「日曜天国」(TBSラジオ)でも取り上げられたりして自分でもちょっと驚いています(笑)

- これからも「名前入りカセット展」は続けられるのでしょうか?

 常設したいのはやまやまですが、常設できる場所がないので入場料をいただくという類の展示ではないので難しいところですね。こうやってカフェとのコラボなどで場所をお借り出来れば、不定期ではありますがこれからもやっていきたいとは思っています。

- 今までに持ち主に返還出来た数を教えてください

 今まで5人の方と連絡が取れたのですが、1人を除いて「別にいいです」「あって嬉しかったです」だけで終わってしまっています。理由としては既にファミコンを持っていなかったりとか個人情報の観点から身分を明かしたくないとかで・・・ただ、その1人には「忍者ハットリくん」をお返しすることができました。その時の模様は他社さんの記事になっています。

(返還に至らなかったカセットも展示されていました)

- 一般の方が名前入りカセットを寄贈することは可能でしょうか

 こういったイベントの時に対応できるスタッフが在中していれば、ありがたく受け取らせていただいています。買取ではなく寄付していただくというかたちになってしまうのですが、活動の趣旨をご理解いただければと思っています。

- これからの活動についてはどのようにお考えでしょうか

 仕事というよりは個人の趣味の範疇でやっているので、これ以上規模を大きくするのは難しいかもしれません。それでもこうして僕たちの活動に興味を持ってくれて取材をしていただけているので、本業のソフト販売に繋げていければありがたいですね。

― 本日はご多忙の中お時間をいただきまして、ありがとうございました

 このイベントに興味を持っていただけたのでしたら、他にもイベントを企画しているのでそちらにもぜひ遊びに来てください。本日はありがとうございました!

会場の「フライハイカフェ」は飲食物の注文でゲーム遊び放題!

会場となっている「フライハイカフェ」はゲームソフト開発会社「フライハイワークス」が運営するマンガ喫茶ならぬ「ゲーム喫茶」で、ドリンクやケーキセットを注文すれば「フライハイワークス」のゲームが時間無制限で遊び放題という太っ腹なカフェです。

代表取締役の黄政凱さんがステキな笑顔でお迎えくださいました!こちらは期間限定ではなく通年営業ですので、時間があるときは秋葉原でのんびりゲーム三昧してみてはいかがでしょうか。

フライハイカフェ
東京都千代田区神田和泉町1-6-7
JR秋葉原駅から徒歩5分
営業時間:平日16時~21時 土日祝12時~21時
(名前入りカセット展も同時刻の開催 開催中~12月22日まで)

主催の関さんの言葉をお借りするならば「趣味の延長」ということですが、趣味を超越した面白味のあるイベントでした。レトロゲームに対する愛情にあふれていらっしゃるので、こういったイベントを非営利で開催できるのではないでしょうか。レトロゲームマニアの筆者としては、これからの展開に期待大です!

レトロゲームといえばゲームボーイという人も多いと思いますが、現代の幼女にゲームボーイを触らせてみると・・・時代の移り変わりはあっという間だということを思い知らされました。

画像掲載元:名前入りカセット博物館、SS.ナオキ