さよなら八重洲ブックセンター本店、店員さんは「プロ集団」出版社の書店営業担当は戦々恐々だった

八重洲ブックセンター

44年前、東京駅八重洲口にオープンした巨大書店、八重洲ブックセンター。当時は街の小さな本屋さんしかない中、大型書店の先駆けとして愛されて来た店舗でした。筆者は18年ほど前、今はなき出版社の営業をしていた関係で幾度となくお世話になった店舗。店員さんへの売り込みの際に他店では聞かれないような「鋭いツッコミ」をされるので、営業をかける身としては常に臨戦態勢でした……。

八重洲ブックセンター本店、44年の歴史に幕

2023年3月31日20時、八重洲ブックセンター本店が44年の歴史にいったん幕をおろしました。「いったん」というのは、再開発によって高層複合ビルにテナントとして入る予定があるため。現店舗での営業を一時的に終了するということになります。

ちなみに2020年10月には1階入口付近に「ドトールコーヒーショップ」が、2021年10月には地下1階に100円ショップ「Wat's with」が開店。個人的には、あの八重洲ブックセンターの中に!?と驚いたことを覚えています。どちらも東京駅付近では貴重な店舗だったので、短命で終わってしまったのは残念です。

八重洲ブックセンターにアポ無しで行くも……

今から20年近く前、アポ無しでムック本や雑誌を売り込みに行っていた筆者。2月某日に「アポ無し」で行ってみました。

海外の旅行ガイド(超ヤバめな本)を売り込みに行っていた筆者、当時の担当者の方はすでにこちらには在籍しておらず、アポ無しだったため店内の撮影も出来ず……。

本が少なくなってきた店内を見回しながら、店内で「海外旅行のガイドブック」をプレゼンしたことを思い出しました……。実は一般的な書店であれば「面白いっすね、置いておきましょう!」と言われるのですが、八重洲ブックセンター本店と青山ブックセンター六本木店(既に閉店)だけは違ったんですよね。

「ここが圧倒的に面白い」「絶対に役に立つ」「売るためのポイントはどこか」「どういった客層を想定しているか」というようなことを100%伝えることが出来なければ、余程の話題書でない限り店頭に並べてもらうことは出来ませんでした。

雑誌、ムック、書籍は売れ残った場合は基本的に100%返本が可能なので、他店であればお試しで置いてもらえることが多かったのですが、ここは担当者様に認められなければ一冊も置いていただけない……店員(バイヤー)さんがいかに「プロ」であるか、駆け出しの出版社営業マンとしては人生の勉強をさせていただいた場所でした。

20年近く前、別の出版社の方と話した際も「八重洲ブックセンター」は特別な本屋さんだったと伺った記憶があります。おそらく店員さんにとっても、八重洲ブックセンター本店で働くというのは特別なことなんだろうなと……。今後はビル丸ごと本屋さんではなくなってしまいますが、またこの場所に復活する日を楽しみにしています。

ちなみに筆者が現体制の八重洲ブックセンターで最後に買った本は、最果タヒさんの「夜空はいつでも最高密度の青色だ」でした。デジタル書籍も手軽に持ち運べていいけれど、心に刺さる本は「紙」でページをめくりながら読みたいですね。

ありがとう、八重洲ブックセンター……形は違えど、また会える日を楽しみにしています。

八重洲ブックセンター本店へは、JR東京駅八重洲南口からが行くのが一番近かったんですよ。八重洲南口付近にある「東京ラーメンストリート」は、色んなタイプのラーメンを楽しめるのでおすすめです。

source:八重洲ブックセンター