「鉄を酸化」させて描いた絵が圧巻の美しさ!制作者に話を聞いた

image:YASUKA.M  錆師(@YASUKA_Martwork)

絵に色を付ける際、絵の具、色鉛筆、クレヨンなどを使用されることが多いですよね。ですがTwitterにて、鉄を酸化させて絵を描く独自の技法を用いた作品が熱視線を集めています。それは、YASUKA.M  錆師(@YASUKA_Martwork)さんが描き、躍動感や生命力溢れる1本の木の絵。一目で心奪われる不思議なパワーを秘めている圧巻の作品なのです。今回は制作秘話を伺いました。

鉄を酸化させて描いた絵に感動!

「鉄を酸化させて絵を描いてます。独自で開発したこの技法を日本発祥の芸術として残せるように邁進しています。」という一言と共に、作品が掲載されたツイートを発見しました!心に響く見事な圧倒的存在感があり、趣のある作品と、鉄を酸化させて描くという斬新な技法にも驚かされますね。

YASUKA.Mさんの作品には、「本当に素晴らしい技術・芸術だと思います」「幻想的で美しい」「好きな作風」など絶賛の声が寄せられ、注目度の高さが伺えます。

制作者さんインタビュー

image:YASUKA.M  錆師(@YASUKA_Martwork)

絵を描かれている東京都出身で多摩美術大学彫刻学科をご卒業された、YASUKA.M  錆師(@YASUKA_Martwork)さんにお話を伺いました。

■絵描き歴、絵を始めたきっかけは?

ーー物心つく前から絵を描くことが大好きで将来は画家になると感じていました。大学で彫刻を学んだ際に素材の持つ美しさ、特徴、個性などに感銘を受けてからは素材の魅力がより引き立つ様な作品創りを心がけるようになりました。現在の技法で描き始めたのは2015年の春にNYで個展のお誘いを頂いた際、壁面で飾れる作品を希望されたのがきっかけです。

自分の彫刻のスキルと知識を生かした平面作品を創ろうと考えた時、在学中から構想はあったものの挑戦していなかった“鉄を錆びさせて絵を描く”という表現方法なら壁面に飾れると思ってすぐに描き始めました。その後1年程別の仕事をした後に2016年の春から本格的に活動を開始しました。

image:YASUKA.M  錆師(@YASUKA_Martwork)

■描かれる際のこだわりや、制作過程など教えてください

ーー一番のこだわりは素材が持つ個性を活かし、人の手仕事が加わることでより魅力を引き出す様な作品制作をするということです。日本のたたら製鉄や、庭師、盆栽などといった職人さんのお仕事にとても強い影響を受けて今の作品達が生まれました。自分のエゴだけで創るのではなく、素材と対話しながら一緒に完成させていきたいです。

作品の材料は鉄板です。主に薄い鉄板を使用しておりますが、時々厚みのある鉄板を用いることもあります。具体的な制作技法に関しては現在お答えすることができず申し訳ございません。

■1作品あたりの制作時間は?

ーー制作期間についてはよく質問を頂くのですが、用いる技法によって変わります。じっくりと長い時間をかけて酸化させないと現れない表情もあれば、酸化が進みすぎないうちに、短期間で一気に集中して仕上げなくてはならない作品もあります。
腐食の進み具合は素材に任せないとできないので、わたしは素材から良い表情が現れる様に環境作りやサポート役に徹し、ローテーションを組んで何種類か同時に制作しています。新作の【星守】は制作期間およそ1ヶ月程かかりました。

image:YASUKA.M  錆師(@YASUKA_Martwork)

■鉄板を錆びさせて絵を描かれていらっしゃるようですが、どういったことなのでしょうか?

鉄板を錆びさせ、その上に絵の具などは用いず、全て鉄に化学反応を起こして描いています。紙やキャンバスの上に絵の具で描く表現とは違い、画面となる鉄自体が物質変化した結果、作品の世界が創られています。なので、絵画というよりもごくごく平面に近い彫刻作品だと思います。

■鉄板を錆びさせることの効果とは?

ーー透明度の高く、宝石の様に煌めく色彩はもちろん最大のアピールポイントだと思います。他にも、見る角度で色彩や立体感に変化が生じるので、一つの作品の中で様々な表情をみつけることができるのが面白いと思います。また、錆びていくという現象をポジティブに捉えるきっかけになれれば嬉しいです。

愛情を持って自分の個性と向き合い、生涯を通して磨き続けていくことで、宝石の様に美しい錆を身に纏って誇らしく生きることができますように。そんな想いも込めながら唯一無二の作品を創っています。

image:YASUKA.M  錆師(@YASUKA_Martwork)

■いいねやRTされるなど、反響がありますが、 どのような心境でしょうか?

とても嬉しくて幸せです!実はSNSで作品を発表し始めたきっかけが、長年飼っていたペットの介護に集中するために個展やフェアでの活動を休むと決めた時でした。現実世界で展覧会が開けなくても作品を創り続け、SNS媒体で24時間365日、ずっとわたしの作品を展示し続ける特別なギャラリーを開くぞ!という気持ちで開始しました。今の様に作家活動ができるのはSNSを通じて沢山の素敵なお客様と出会い、応援して頂けたおかげです!本当にありがとうございます。

インタビューの最後に今後描かれたい作品、夢は?とご質問したところ「神話や架空の生き物なども描いてみたいです。そして引き続き技法の開発を進めていきたいです。日本文化や自然界から感銘を受け、独学で開発したこの絵画技法を日本発祥の芸術として残す為に、これからも引き続き精進して参ります。」と語られていたYASUKA.Mさん。

独学で開発されたこの絵画技法を用いて描かれたYASUKA.Mさんの作品が、この先、1人でも多くの方の目に留まり、世に羽ばたいて欲しいものです。今後YASUKA.Mさんの益々のご活躍から目が離せないですね。

錆といえば、ノルウェーの山脈で見つけた「錆びた剣に秘められた衝撃の事実」も興味深いですよ!

取材協力:YASUKA.M  錆師(@YASUKA_Martwork