陶芸家が作った渡り蟹が本物にしか見えない、創作秘話を聞いた

image:岡村悠紀(@0kam)

Twitterに投稿された1枚の画像、スモーキーブルーのような青色が美しい渡り蟹。実は陶器製の蟹なのですが、質感やフォルムなどの完成度が高過ぎて、まるで命が宿り生きている蟹そのものです。Twitterにて投稿されたのは陶芸家の岡村悠紀さん(@0kam)です。今その蟹が細部までリアルだと話題を集めています。一体どのように作られているのかなど創作秘話を伺いました。

話題のツイート

生命力を感じる素晴らしい作品ですね。心奪われてしまう存在感です。

このツイートのリプ欄には「こんなに精巧な物が欠ける事なく出来るんですね。スゴイですし、美しくて宝石みたい。」「水槽の中に入れていたら、綺麗な蟹だな~って全く気付かずに眺めてると思う」「意味がわからん……脳がバグりそうwこれが焼き物だって?」「一瞬生きているかと思いました、凄いです!」などの声が寄せられ、技術力の高さに驚き、騙される人が続出しています。

創作者で陶芸家の岡村悠紀さん(※以下、岡村さん)にお話を伺いました。

創作者インタビュー

image:岡村悠紀(@0kam)

■岡村さんのプロフィールを教えてください。

1989年山形県生まれです。幼い頃から身近な自然や生き物が好きで、その素晴らしさを表現したくて制作を始めました。2011年に東北芸術工科大学入学をきっかけに陶芸と始め、活動する過程で明治の工芸の”超絶技巧”の作品群に出会い、感銘を受けて今の作風にたどり着きました。

 

自然をテーマにするにあたり、現時点ではカニの作品が多いのですが、多くの生き物をモチーフにしていくつもりです。

 

【陶歴】

2012年〜2017年 陶芸家 高橋廣道氏に師事
2019年 第25回 日本陶芸展 入選
2019年 茨城県陶芸美術館 いきもの狂騒曲
2020年 アトリエヒロ グループ展
2020年 ギャラリーマルヒ 初個展

■画像を何度見ても焼き物だと信じられませんが、本当に陶器製なのですか?どのような工程を経て作られているのか教えていただけますか?

はい、全て私が創作しております。ボディは全て焼き物で成形し、釉薬で彩色しています。作り方はざっくりとお伝えしますと、下記のような工程になります。

 

1.成形2.素焼き(低温焼成) 3.施釉、着彩4.本焼き(高温焼成)5.上絵付け(加飾)6.焼き付け(低温焼成)7.組み立ての7工程あります。

これだけの工程が必要とは、本当に手間暇をかけて作られているのですね。

■青色の渡り蟹の創作時間はどれくらいかかったのでしょうか?

3〜4ヶ月間かかりました。置物として成り立つよう、ポーズを固定できるギミックを考えたりするのが苦労する点です。可動式を実現しつつ、焼き物ならではの技法や質感を上手く取り入れるよう心がけています。

見た目の完成度だけでも圧巻なのに、さらに可動式とは驚愕です。

image:岡村悠紀(@0kam)

■どのように可動式を作られているのですか?

各パーツで焼き上げた後組み立てます。
西洋の磁器人形のビスクドールと同じ方法で仕上げています。

■多くの方がツイートをご覧になられて、反響を呼んでいますが、今の心境を教えてください。

多くの方に作品を見ていただけて大変嬉しく思います。地道に創作を続けてきてよかったと感じています。

image:岡村悠紀(@0kam)

■今後、作られてみたいものはありますか?

今後も自然をテーマを主軸にカニだけでなく、様々な魅力的な生き物をモチーフに創作を続けていきたいです。

岡村さん、たくさんのお話をしていただきありがとうございました。長時間かけて丁寧に作られた、陶器製の蟹がまるで命を吹き込んでいるような力作の数々を実際、目で見て感動したいものです。

東京都の文京区で岡村さんの個展開催中です。

お近くの方はぜひお立ち寄りください。

岡村さんの活動のご様子は岡村悠紀さん(@0kam)のTwitterでチェックしてみてくださいね。今後の作品も目が離せません。これからも楽しみにしています。

アートといえば、石なのにやわらかそうな質感が信じられない!脳内がバグるアート作品の制作者に話を聞いたも話題を集めました。

Source:岡村悠紀(@0kam