あいつが変身する姿が凄すぎる!来年の春には美しい〇〇になる!

ある日の昼過ぎのこと、この黒っぽいものが動き出しました。最初は目の錯覚かと思ったのですが、確実にピクピクと動いていました。慌ててカメラを出してきて撮影をしました。およそ10分間動き続けたあと動かなくなりました。動き始めた時の姿と動きが止まった時の姿は全く別のものです。この生き物の一部を隠していますが、よーく見ると少しだけ透けて見えるようになっています。北海道旭川市での出来事です。

隠している部分を取り去ってみましょう。

最初は体全体が黒っぽかったのですが、だんだんと右側の部分が黄色い色になってきました。黄色い色は時間とともに徐々に黄緑色っぽくなっていきます。

撮影開始1分後です。

この生き物が体を動かすたびに黄色い部分が多くなってきます。実は今、脱皮をしているところなのです。脱皮をしている瞬間はそうそう目にできる訳ではありません。貴重な場面に遭遇することができました。

撮影開始後2分後です。

かなり皮を脱いでいます。この生き物の動きがだんだん大きくなってきました。次の写真を見ると、体を動かして一生懸命に脱皮しているのがわかります。

体をくねらせています。

上の写真と比べてください。上の写真とほぼ同時刻に撮影したものです。右側が頭部ですが、位置がずれているのがお分かりいただけるでしょうか。体を上下にくねらせることによって皮を脱いでいきます。

黒い皮を脱ぎ終えました。

脱皮が終わりました。普通ならば、脱皮が終わると黒い皮は下に落ちるのですが、今回は一部分が体に付いたままです。これまでに何度も脱皮を終えた状態を見たことがありますが、皮がついたままの状態を見たのは初めてです。

翌朝の状態です。

翌朝、近づいてみると色が変わって黒っぽくなっていました。無事、さなぎになりました。この生き物は、脱皮になる何日か前に、さなぎになってから羽化するまでの間無事に過ごすことができる場所を探し回ります。

良い場所を見つけたら、先ずお尻の部分を固定します。次に、口から何度も糸を出して自分の体を支えるための輪を作ります。丈夫な輪ができると、その輪の中に体をくぐらせて体を支え、脱皮の時を待ちます。

サナギの色はどんどん黒っぽくなっていき、羽化が近くなるとサナギの中が透けて見えるようになります。

脱皮1日前の様子です。

こんな風な体勢で脱皮するまでの時間を過ごします。外側の皮はこのような色をしていました。脱皮をするときには、最初に頭の部分に切れ目が入って脱皮を始めます。

脱皮準備前の状態です。

脱皮をする前、この生き物はこんなに大きかったのです。この写真からこの生き物の正体がお分かりになったでしょう。そうです。これはキアゲハの幼虫です。

たまごから孵ったばかりの時はとても小さくて、鳥か何かの糞のようにさえ見えてしまいます。成長するにつれて食欲も旺盛になり、葉っぱを食べる音が聞こえたりします。

さなぎになる準備を始める時に、幼虫はお腹の中にあるものを出し切り小さくなります。上の写真がやけに小さく見えるのはそのためです。

来年の春、キアゲハになるはずです。

脱皮してさなぎになった幼虫は何事もなければ来年の春に羽化してキアゲハになります。さなぎから出てきたキアゲハの羽はクルクルとカールされています。そして、サナギがついていた木の枝などの上へ上へと上がっていきます。

上へ上がるにつれて、羽が徐々に開いていきます。羽は風に当たることにより、飛ぶために必要な硬さを手に入れて、飛び立っていきます。

写真のキアゲハは2016年の春に羽化したものです。この写真で、羽を風に当てている様子がわかります。

キアゲハの幼虫がさなぎになる時期は、夏から秋にかけて何度かあります。早い時期にさなぎになったものは、その年のうちに羽化します。しかし、寒くなってからさなぎになったものは冬を越して羽化します。

今年の旭川市(北海道)は天候が不順でキアゲハの幼虫の数は多くありませんでした。時期外れにたまごからかえったものもありました。なるべく自然のままにしておきたかったのですが、あまりの寒さに動きがにぶくなり、このままでは死んでしまうと考え、残っていた2匹を虫かごの中に入れました。

虫かごの中で餌を食べて、サナギになる場所を決めて、無事さなぎになりました。あたたかな場所に置いておくと冬の間に羽化してしまいます。それはかわいそうです。やはり、雪が融けて春になってから外に飛び立ってほしいものです。

今は、寒い車庫の中で春になるのを待っています。

キアゲハの幼虫は、外敵に襲われないように鳥の糞のように擬態をしたり目立たない場所でじっとしていたりします。その様子は、まるで自然が作った錯視画 のようにさえ見えてきます。